topTOP インタビュー 「好きなこと」で食べていく方法と「小さな好き」の育て方 パーティークリエイターの生存戦略① Afro&Co.代表 アフロマンスさん(34歳)

「好きなこと」で食べていく方法と「小さな好き」の育て方
 パーティークリエイターの生存戦略①
 Afro&Co.代表 アフロマンスさん(34歳)

インタビュー 2019.09.05

人工知能が発達し、「クリエイティブ」や「デザイン」といった考え方が重要視されるようになった。

今回は、アイディアで非日常体験を生み出しているパーティークリエイターのアフロマンスさんにお話を伺った。アフロマンスさんは、クリエイターとして新感覚の体験型イベントや空間プロデュース、メディアやSNSの情報設計など幅広く活躍されている。

ご存知の方も多いかもしれないが、泡にまみれて踊る泡パーティーこと「泡パ®」や、最近では血と薔薇をテーマにしたイマーシブレストラン「喰種レストラン」を企画し、大きな話題となった。

そんなアフロマンスさんに、
①自分の好きなことで食べていくコツ(第一回)
②アイディアの鍛え方(第二回)
③これからの時代に必要・求められる能力(第三回)
の3点を中心に伺った。

 

「アフロマンス流アイディアの出し方と鍛え方」 パーティークリエイターの生存戦略②はこちら

「数字に囚われた時代から『自分が何をしたいのか』問われる時代に」 パーティークリエイターの生存戦略③はこちら

「趣味としてやっていたので仕事との両立は苦ではなかった」

経歴

広告会社を経て、独立。株式会社Afro&Co.を立ち上げ、代表を務める。
パーティークリエイターとして、新感覚の体験型イベントや施設の企画・監修・制作などを行う。
これまでに、「泡パ®」や「喰種レストラン」以外にも、ハウスに合わせてマグロをさばく「マグロハウス®」や、120万枚の花びらに埋もれるチルアウトバー「SAKURA CHILL BAR by 佐賀」など、様々なユニークなイベントを仕掛け、大きな話題となった。
「世の中に、もっとワクワクを。」という理念を掲げ、理屈を超えた、新しい体験づくりを追求している。

―アフロマンスさんといえば「泡パーティ」で有名ですが、どうしてそれを始められようとしたのですか?

2012年4月に花見をしていたときに、「海外ではこんなパーティーがあるらしい」と、クラブの中で泡にまみれて踊るイビサ島の“泡パーティー”の話で盛り上がり、「日本でもやろう」と計画を始めました。

その当時のFacebook は、企業ページもあまりなく、個人がちょこちょこやっているような時代。そんな中、個人のFacebookアカウントで「今度、泡パーティーをやります!」と投稿したら、広告なしで2万いいねくらいついて、一気に話題になりました。

もともと面白いというか変わったイベントをやっていて、ビルの屋上やビーチ、路面電車など、普通パーティーをやらないような場所で好んでイベントをやっていました。
“泡パーティー”は、色々なイベントにトライしている中で、突如、話題になって、人気が出たという感じです。

 

―元々そういうイベントを企画するのが好きだったのですか?

そうです。学生の頃からクラブイベントを主催していたんですが、やっていく中で普通のイベントに飽きていきました。
「そもそもクラブ以外の場所でやってもいいのでは?」「普通のイベントじゃできない体験をつくった方が面白いのでは?」と思うようになり、ちょっと風変わりなイベントを企画するようになりました。

大学卒業後は、大手広告会社に総合職として入社し、プランナーとして色んな企業のプロモーションを企画する仕事につきました。職種柄、ある程度、時間のコントロールができたというのもあるかもしれません。
3日間寝ずにアイディアを考える人もいれば、3時間でパッとアイディアを出す人もいるような仕事です。
キャリアの後半は、あまり時間をかけずにアイディアを出せるようになっていったので、両立が可能でした。そもそもイベントは「楽しい趣味」としてやっていたので、全く苦ではありませんでした。

 

仕事を「自分ごと化」していく

―イベントの企画を、「仕事外の趣味としてやっていたので辛くない」とお話されていましたが、逆にやっていて良かったことはありますか?

今思えば、会社では大手クライアントの企画、オフでは好きなことの企画、両方をやるというのが、かなり有効だったと思います。

会社では個人で扱えないような金額を扱います。

一方で、自分のお金じゃないからどうしても「自分ごと化」しにくいですよね。
例えば、クライアントから1億円の予算を預かった時、予算の50万100万の差って誤差の範囲に感じます。消費税みたいなレベルですから。

だけど、これが自分個人でイベントをやる・・・結婚式とか何でもいいですけど、その時の50万100万の差ってとても大きいですよね。

僕は広告会社で、ある程度大きな予算を使う時の感覚、例えば「これくらいのお金があれば、こういうことができる」「企業はこれぐらいの予算をかけてやっている」といった予算感や金銭感覚を学びつつ、個人でイベントをやることで細部まで自分ごと化して、肌で感じることを学びました。

 

―確かに、大きなお金の感覚というのはなかなか個人では体感しづらいかもしれません。それ以外にも何かありますか?

大きな仕事の企画と小さな個人の企画、その両方が僕の中でうまく相互作用してくれたと思います。企業から依頼を受けてイベントをやる時、誰がお客さんかというと、一番は「お金を出しているクライアント」です。極端な話、イベントの参加者より、クライアントが喜ぶことが重要な訳です。

でも、本当はそんな訳ないですよね。

クライアントにとって本当に利益になるのは、「クライアントの課題が解決され、かつ、イベントの参加者もハッピーになって、クライアントのことを好きになる」という状態です。

自分自身が主催でイベントやっていると、目の前のイベント参加者をハッピーにするって当たり前のことなんですが、仕事かつ企業のイベントだと思うと、どこかで自分ごと化できない部分があって、目の前の参加者のことを忘れちゃったりする。
オフの活動もしていたからこそ、そのことに気づけました。

 

「ビジネスはお金の大小ではない」独立の契機に

―独立はどの段階で考えられたのでしょうか?泡パーティーで盛り上がった時なのでしょうか?

そもそも、“泡パーティー”で稼ごうとか、それで食っていこうとか思っていませんでした。
「副業」とか「稼ごう」とかじゃなく、ただ好きだから「趣味」として続けていました。

独立に至った1つの転機は、「ITビジネスの原理」などを書かれている執筆家・IT批評家の尾原和哲さんと出版した本について対談した時です。

僕のやるイベントって、ITビジネスなどに比べると、人手や会場など、コストが莫大にかかります。それを考えると、ビジネスに向いていないと思っていて、独立するのをためらっていました。

そんな時、尾原さんから「10億20億の大金を稼ぐことがビジネスではないよ。アフロがやりたいことをやって、誰かがお金を払ってくれるということが素晴らしいこと。それに、もしアフロが食うに困ったら助けてくれる人は沢山いるでしょ。それで充分じゃない。」みたいなことを言われて、ハッとしました。
独立するなら「ビジネスで当てなきゃいけない」とか「スケールしなきゃ意味がない」と変な考えに捕らわれていたんです。

「自分が好きなことやって、それでみんな喜んでくれて、それで食っていける。あとはそれでもうちょっと稼いだら、新しい楽しいことに投資できるって最高じゃん」。そう思えたことが独立のきっかけになりました。

 

「食べていくこと」と「好きなこと」を最初から紐づけて考えない

―もし好きなことをやっていこうとする際には、アフロさんのように小さく初めて徐々に大きくしていくという戦略が良いと思われますか?

今やっている仕事が楽しいんだったら、その道を極めたらいいと思いますよ。
でも、そうじゃない人も、今の会社をいきなり辞めなくてもいいんじゃないかと思います。

泡パーティーをやろうとして、会社に「こんなイベントが海外にあるからお金を出して欲しい」と言っても出さなかったと思います。

会社の中で、やりたいことをやろうとして、うまくかみ合わずに潰れていくアイディアとか若手の気持ちって多いと思います。

それなら、「自分でやっちゃえば?」と思います。
本当に会社が大金を出さないとやれないことなのか?自分の貯金や周りからお金を集めて、小さくトライができないのか?よく考えてみてほしい

ある程度のお金が必要なら、今ならクラウドファンディングもあるわけじゃないですか。
それを個人的にやれば良くないですか?
もっと言っちゃうと、自分の会社がダメなら、知り合いの会社に持っていってお金を出してもらうこともあるかもしれない。

会社員やっているけど、「こんなフェスがやりたい」と思っているなら、Afro&Co.に持ち込むのもありですね。笑
何はともあれ、アウトプットしないと何も始まりません。

会社員で「こういうことをやってみたい」とモンモンとしている人へのアドバイスとしては、今の会社を辞めなくてもやり方はいくらでもあるのでは?と思います。

僕は「究極の人の幸せ」は、「誰かを喜ばせること」だと思うんです。
でも、食うのに困る人がそんなこと考えられるかというと、考えられないですよね。
だから、まずは生きるか死ぬかで生きるってことが大事だし、今の社会の中で人間的な生活ができることが大切です。
いきなり「自分が好きなことで食べていかないといけない」と決め込む必要はありません。

―生きていくための仕事と好きなことを分けて考えることが重要だということでしょうか?

仕事をしながら、空いている時間で好きなことをずっとやっていると、ある時花開くことがあります。
それまでは食えなくて当然だし、むしろ食うこととは別に考えた方がいいと思います。

僕も色々なイベントをやって“泡パーティー”が当たったので市場価値が生まれたわけですが、それまでのイベントに市場価値があったかと言われると、ないわけですよ。笑

だから、もし仮に、最初からイベントで食っていこうとしたら、きっと稼ぐ方向に走ってしまっていたと思います。
面白いかどうかではなくて、”損するか得するか”みたいな視点でしか考えられなくなっていたでしょう。

そうなったら、 “泡パーティー”をやらずに、もっと無難な、手堅く稼げるイベントばかりやっていたかもしれない。

―いったんお金のことは忘れてやってみるということ?

一旦、「好きなことで稼ぐ」という考えは置いておいた方がいいです。

例えば「今日から漫画を描くぞ」ってやり始めた人が、いきなり高値で売れるものは作れないですよね。
だから、「稼ぐ」ことが先行しちゃうと、結果が出ないからやめようってなっちゃいます。

でも、仕事をしながら空いている時間を、「好き」で漫画を書いていると上手くなります。
そして、アウトプットを続けていくと、出会いもあり、ファンも増えて、あるとき花が咲くわけです。

それまでは食えなくて当然だし、むしろ食うための稼ぎは別にすることをおすすめします。
「漫画書きたいから、会社に漫画の部署を作ってください」と言っても通すのは難しいだろうし、「それいくらになるんだ?」という話になりますよね。
会社の中で実現や達成が難しそうな「やりたいこと」があるなら、自己責任の範囲でやりたいことをやればいい。

「好きなことで食べていく」「会社で事業化する」とか、かっこいいですけど、上手くハマらないことの方が多いと思います。
そうなった時に、ハマらないから辞めるっていうのは、すごくもったいない。
結果が出れば、皆ついてきます。人もついてくるし、企業もお金を出したいって言ってきます。ただ、それまでになるには「儲けを考えない期間」が必要だと思うんですよ。

 

だから、食っていくことと好きなことを最初から紐づけない。
最近「好きなことで生きていこう」とかよく言うじゃないですか。あれってすごく危ない言葉ですよね。
好きなことで食ってくことを考えないでやった結果、好きなことで食べていけるようになるんですよ。逆説的ですが。

スタートアップの世界と似ています。「来月から成果出して」と言われると、途端にアイディアがすぼまるじゃないですか。
「成果は数年待ってもいいよ」と言われた方が長期的な目線で考えられるし、極端なことを言えば数年は赤字でいい。赤字の期間があるからこそ、後でスケールするわけです。「※Jカーブ曲線」と呼ばれているものですね。

「食べることと好きなことを最初から紐づけて考えない」というのは、それの個人版です。
最初は利益を考えないから、価値あるものが生まれるということです。

 

(※(注)Jカーブ効果とは?)

自国通貨の上昇や下落局面において、貿易収支が最終的に想定される方向と短期的に逆に動くことを指し、J字型の曲線を描く。
スタートアップでも同じように、事業を始めて数年は赤字であることが多く、その後黒字転換してこれまでの損失を回収するというモデルになっていることが多い。

 

伝える側に立つことで「好きを育てる」

皆さん勘違いされますが、「好きなこと」って別に特別なことじゃなくていいです。
僕が独立を踏みとどまっていたのと同じで、「やるならビックビジネスにしなきゃいけない」「とにかく凄い事をしなきゃいけない」「しかもそれを選んだらつき通さなきゃいけない」とプレッシャーを感じる人もいるかと思います。

でも、そんなことで踏みとどまらなくていいというか、「好きなこと」ってそんな大層なことじゃないんです。
漫画好きだったら漫画でいいと思うし、ゲーム好きだったらゲームでいいと思います。

ただそれを、消費者としてだけじゃなくて、つくる側や伝える側、 “自分がやる側に回る”というのを、ぜひトライしてみて欲しい。
好きなことって本当に何でもいいですよ。
枝豆が好きなら、枝豆の専門家とかすごいニーズあると思うし。
先々、ビールメーカーから絶対オファー来ると思いますよ。笑

―確かに、好きなことを難しく考えているのかもしれません

この間「ダンス亜風呂屋」という銭湯で踊るイベントに、みかんの専門家の清原さんという方をゲストで呼んだんです。
社名は「株式会社みかん」。「日本みかんサミット」の主催で、全国のみかん農家を知っていて、みかんについて誰よりも詳しい。

自分の息子が「みかんが好きだから、みかんの会社をつくる」って言い出したら、普通の親は止めますよね。しかも、元東大生なんですよ。東大に行ってみかんの会社やるの?みたいな感じになりますよね。
でも話してみると、とにかくみかんが大好きだと分かります。

 

たぶん、好きって育てるものだと思うんですよ。

 

道端を歩いていても、いきなり「みかん好き!」とはならないし、いきなり「クラブ好き!」ともならないでしょう。
「みかんってこんなに面白い」とか、「クラブってこんな一面もあるのか」と発見していく過程の中で好きがどんどん増えていき、育っていく。
それがまた専門性を帯びてきて、よりみんなから、「お前すげえな」と振り向かせることができるようになります。

最初は、「何でみかんなんだよ」とバカにしていたけど、「お前、本当にみかん詳しいな。凄いね」となるわけじゃないですか。それが、仕事につながってお金が貰えるようになっていく。きっとそれは最初からじゃない。

自分でも、「これ好きなのかな」っていうのがわかんないレベルの「小さな小さな好き」がある。

 

「小さな好き」というのは、漠然と消費しているだけだと育たないはずです。みかんが好きだったらみかん農家に行ってみるとか、みかんが好きな人と集まってしゃべってみるとか、自分でアウトプットしないと育ちません。

 

自分の好きがどんどん育っていって、「この好きは、一生続けられる」みたいな気付きにつながると思います。

誰だって最初は、自分で気づかないレベルの「好き」なんです。

ちょっと好きかもって思ったことが、もしかしたら超好きになるかもしれない。
だから、気付くために何かしらアクションを続けていく。

その好きが、もしかしたら途中で飽きちゃうかもしれないし、違うかもしれない。
けれど、それすらやってみないと分からないんだから、好きを育てるというのを頑張ってみたらいいんじゃないかなって思います。

 

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