topTOP インタビュー 「ひとり」の世界観と、一流ライターの仕事術 フリーライター朝井麻由美さん

「ひとり」の世界観と、一流ライターの仕事術
 フリーライター朝井麻由美さん

インタビュー 2019.10.11

皆さんは、「ひとり」と聞いて何を思い浮かべますか?
1人専用の焼肉店やカラオケ…など、「おひとり様向け」ビジネスが注目を集める中、ひとりで充実した時間を楽しむことを指す「ソロ活」という言葉も登場しています。

今回お話を伺うのは、フリーライターの朝井麻由美さん。様々な媒体にコラムの連載や寄稿をする朝井さんが執筆するテーマのひとつが「ソロ活」です。

朝井さんは、ソロ活の達人として、テレビや雑誌なで取り上げられることも多く、カラオケや焼肉のみならず、花見やスイカ割り、ビアガーデンなどにも1人で挑戦しています。

この記事では、朝井さんのこれまでの人生やフリーライターとしての仕事術、キャリアについて伺いました。

ソロ活は自分の好きなことを発信しているだけ

経歴

ライター/編集者/コラムニスト。

著書、「ソロ活女子のススメ」、『「ぼっち」の歩き方』、『ひとりっ子の頭ん中』。『二軒目どうする?』(テレビ東京系)準レギュラー出演中。

執筆テーマはソロ活、人見知り、一人旅、カルチャー。MOTHER2とウニが好き

一人行動が好きすぎて、一人でBBQをしたり、一人でスイカ割りをしたりする日々。

ビールタワーがまぶしい(本人提供)
1人で遊んだ人生ゲーム。ずっと私のターン…!!(本人提供)

―朝井さんは、色々な場所に1人で行かれ、その体験を書かれていますね。元々1人でいるのが好きだったのでしょうか?

特に意識していたわけではありませんでしたが、思い返すと、1人っ子だったので、自然に1人で遊ぶことが多かったです。

小学校の頃は、リカちゃん人形を1人で遊んでみたり、物置を漁って親のゲーム機を見つけ出してきてやったり。とにかく、「自然と1人でいたな」という感じはありますね。

学校での友達づくりは苦労した記憶があります。

小学校に入ったばかりの頃のことで今でも覚えているのが、席の近い子同士で班分けがされた時のことです。班の中で、私以外が全員同じ幼稚園出身だったんですよ!ハブられ感がすごかったです(笑)。いじめ的な「ハブられ」ではないですが、皆まだ小1で、気を遣うとかの意識は芽生えてないですから、自然と元々仲良い子同士でばかり話してしまう感じで。

どういうきっかけで話に入ればいいのかもわからず、うまく輪に入れませんでした。

学校特有の「1人でいるのは良くない」という風潮に最初からつまずきましたね。

学校生活の中での集団行動にもストレスを感じ、結果的に自宅で1人でリカちゃん人形とゲームで遊ぶ毎日になっていくわけです。

 

―ソロ活について発信しているのは、ソロ活についての理解を深めてもらおうと思っているのでしょうか?

それは難しい質問ですね。
インタビューとかだと、「『1人』でいることが肯定されて、生きやすくなるように」とか使命感がある感じでいなきゃいけないことが多いですが、正直そんなに高尚なことは考えていなくて……。
だって、自分以外のことなんて背負えないですし。どちらかと言えば、自分の好きなことを発信しているだけです。

よく「ソロ活をするのに、お薦めは何ですか?」と聞かれますが、本音を言えば、「わからないよ」ってなってしまいます(笑)
例えば、「一人焼肉がいいよ」と言っても焼肉が好きじゃないかもしれない。「ソロ活」とパッケージ化して発信しておいてなんですが、ソロ活が「目的」になってしまうのは違うんじゃないか、と。

好きなことをしていて、それを1人でもやりたくて、結果としてソロ活になっていた、というのが正しい順番だと思っています。

また、他の生き方を否定することだけは絶対にしたくないので、「みんなでワイワイ」が好きな人がいてもいい。あくまでも「ソロ活」は選択肢のひとつ、というスタンスです。
「みんなでワイワイ」にうまく馴染めなかった人が私を見て、「そういう選択肢もあるんだ」と気が楽になればラッキー、くらいの気持ちでやっています。

最近はかなり減ってきたとはいえ、世の中には、「みんなで一緒にいることこそが正しい・1人でいるのはみじめで寂しい」という“呪い”がどうしてもあって、かつては私もそう思い込んでいました。
でも、そういう物差しに沿って生きるのがつらいなら、別の島を作ってしまおう、と。

「1人が好きです」と宣言することによって、「みんなでいることこそが正しい」という島から逃げた、という感覚です。

1人でいる場合とみんなでいる場合、それぞれにメリットがあると思いますが、そのメリットにはついてどう考えられているのでしょうか?

確かに、1人で出来る事って物理的に限られていますよね。
例えば仕事で言えば、大きいことを達成したいなら、組織に入った方がいい。
ですが、私の場合、集団の中でうまくやらなければならないしんどさのほうが勝ってしまうので……。そういう意味では、損をしているとは思います。

また、ご飯を食べに行くにしても、10人で行ってシェアすれば色々なものが食べられます。
ただ、10人で行くとその分の気疲れがあるので、「シェアできること」と「気疲れしない」を天秤にかけた結果、私の中では後者が優先される、という感じです。
1人だと1~2種類しか食べられないかもしれませんが、それでいい。

1人で行動していると、「みんなで行った方が色々食べられていいよ」とか「こんな利点があるよ」と言われますが、そんなことは分かっているんです(笑)。

分かった上で、私は1人を選びたい。

 

3月には、「ソロ活女子のススメ」を出版されたそうですね。こちらは、どんな書籍になのでしょうか?

1人で遊びに行って見つけたコツや心得をしたためたもので、ソロ活のメリットや人目が気になる理由などを考察しています。
タイトルに「女子」と入っていますが、女性専用のものではありません。1人が好きだったり、集団行動が苦手だったりする人なら、性別関係なく楽しめるかと思います。

 

20代前半は、「やばい人」と思われないように自分を押し殺していた

―少しお話は変わりますが、朝井さんは、どんな20代でしたか?

20代前半くらいまでは、「恋愛」とか「モテ」とかの土俵に自動的に乗せられている感覚がありましたね。もうそれが嫌で嫌でたまりませんでした。
これは自分の年齢的なものもあれば、時代性も関係していると思います。

こっちは求めてもいないのに、勝手にランク付けされるような……。
自意識過剰と言えばそれまでですが、当時の女性誌のキーワードって「愛され女子」だったんですよ。品評されて、選ばれることが前提。顔とファッションとメイクと立ち振る舞いの総合点で、A5ランク、A4ランク、みたいな。牛かよっていう。

その「正解」とされるのが、ファッション誌に載っているモデルでした。

今でこそ「オタク」の地位は向上しましたが、当時はまだ「オタク」は蔑称です。私はゲームが好きですが、そんなこととても言えたものじゃなく、とにかく自分の趣味についてはバレないように、押し殺して、ひっそりと生きていかなければならない空気でしたね。
個性を出しすぎると、「やばい人」と思われるんです。

だから、20代前半まではなるべく好きなものについて主張しないようにしていました。
一応ファッション誌に載っているような服装を真似てみて、個性的なものは身につけないようにして……。
年齢が若いときほど、自由度がすごく低かったと思います。

 

―かなり意外でした。どうして変化したのでしょうか?

色々な要因が絡んでいると思います。年齢が上がるにつれて開き直ったのもあるでしょうし、時代的に「個性を出していこう!」という空気になってきたのもある。また、単純に物を書くという仕事柄、自分が何を好きなのかを表に出していく必要もありました。好きなものについての熱量がこもった記事はやっぱり面白くなりますから。

 

―現在の朝井さんを見ていると、「好きなもの」を「好きだ」と発信されていますよね。個人的な悩みで恐縮ですが、「この程度で好きだと発信していいのか…」と思う時があります。そうしたことを考えられることはありますか?

まずは、一言に発信と言っても、「何のために発信したいのか」「どれくらいのスケールで発信したいのか」、ですよね。
それが仕事になるレベルになりたいのか、あるいはもっとスケールは小さく、仲間内で趣味について語りたいのか。

仕事になるレベルで、となると、「この程度で『好き』と言っていいのかわからない」という壁にぶつかると思います。「私より好きな人いっぱいいる」とか「ゲーム好きだけどゲーム好きと言えるほどやっているのだろうか」…みたいな自信のなさが、発信ができないことにつながっている気がします。

仕事にしたいとかの大きなスケールの話ではなく、単純に「周りに話したいけど話せない」という場合。

もしかしたら、「それを好きである自分を人に見せる自信がない」のではないでしょうか。

私は昔、ゲームが好きであることを人に話せませんでしたが、前述の通り「オタク」が蔑称だった時代なので、「ゲーム好きの人」というラベリングをされるのが怖かったのです。でも、そうやって人目ばかり気にして自分の正直な「好き」に蓋をしていると、だんだん自分が何を好きで何を嫌いなのかがよくわからなくなってくるんですよね。

私の場合は、仕事柄、必要に駆られて自分の好きなものについて前面に出していくようになりましたが、「好き」と言い続けることによって、より一層好きになっていったような、「好き」の種が育っていったような感覚があります。

そういう風に生きるようになってからのほうが、人生楽しいですし、「これ好きだったよね?」と情報が集まってきたり、好きなもの関連の仕事が入ってきたり、得することも多いです。
振り返ってみると、「誰かにこう思われるかもしれない」と人目を気にして委縮していて得したことなんて、ひとつもないなと思います。

 

会社員としてやっていける人は会社員の才能がある

―朝井さんは、新卒時では出版社に入社されていますが、どれくらいで辞められたのですか?

だいたい半年くらいですね。

 

―辞めるときに悩みませんでしたか?

迷いましたね。それで、色々な人に話を聞きました。
その中で、「結局私が何を言っても、『でも』と言っていない?色々な人に聞いているけど、結局いいよって言ってほしいだけだよ。自分の中でもう答えは決まっているのではないの?」と言われてハッとしたのを今でも覚えています。
それで、これ以上人に聞いても変わらないので、仕事を辞めようと決めました。

 

―よく、「3年以内で辞めるとまずい」という主張がありますが、それについてはどう思われますか?

そもそも「3」ってどこから来た?と思いますね。
一方で、フリーライターを経験してきた結果、「会社員をやっていた方がいいよ」という意見も分かります。

フリーライターでいえば、会社員という収入がある状態なら、好きなものだけ書くことができます。
完全にフリーでやると、好きなこと・書きたいことだけを書くのでは食べていけない可能性が高いです。食べるためにやらなければいけない仕事も出てきます。

さらに、会社員をやっている経験や知識を自分の書く仕事に還元している人もいますね。
例えば、美容メーカーで働いていれば美容ライターに、アパレルで働いていたらファッションライターになれるかもしれません。会社員生活で起こる出来事をもとにコラムを書けることもあるでしょう。

最近は特に、会社での話を描いたマンガがSNSで拡散されたことで、専業のマンガ家になった人もたくさんいますよね。

結局、向き不向きだと思っています。

確かに会社員を続けることで得られるものがあるとはいえ、組織の中で働くのは誰にでもできることではありません。

毎朝同じ時間に起きて、満員電車に乗って、会社の人間関係の中でうまくやって、っていうのは立派な能力と言えるはずです。

決して「できて当たり前」のことではなく、向いていない人だっています。

有名な少年漫画「HUNTER×HUNTER」に出てくる、強化系の念能力(注1)の人が具現化系の念を使おうとしてもうまくできない、と同じようなもので……。

(注1: 体からあふれ出すオーラとよばれる生命エネルギーを自在に操る能力のこと。出典「HUNTER×HUNTER」6巻)

 

―朝井さんは、能力を発揮できなかった?

そうですね。私は「会社員」という念能力がありませんでした。
一方で、フリーでそこまで苦労をした感触はなくて。運がよかったのもありますが、向いてもいたんでしょう。「フリーで働いているのすごい」とよく言われるのですが、すごいことをしているつもりは特にありません。会社員のほうがすごいし、安定や福利厚生を考えたら羨ましいとすら思います。

だから、「3年は辞めるな」というのも結構雑な言葉なんじゃないでしょうか。

向き不向きは人によってまったく違っているから、3年我慢して開花する人もいれば、別の場所で花開く人もいる。
そこを考えずして、機械的に「3年」というのは違うんじゃないかなと思います。

 

「キャリアプラン」も向き不向き

―今の場所にくるまでの「キャリアプラン」は思い描かれていたのでしょうか?

よく聞かれますが、何も考えていません。
学生時代、就活を始めたくらいの頃にも「キャリアプランを決めろ」とよく言われましたが、そんなのわかるわけないと思っていましたし、今も10年後のことなんて何もわかりません。
今ひとつテーマとして持っている「ソロ活」についても、そんなのライターを始めた10年前に、「10年後はソロ活で!」と具体的なキャリアプランを描けていたとしたら、すごすぎます(笑)。

確かに1人でいるのは好きでしたけど、それがコンテンツになるほど特殊なことだなんて当時は思いもしなかったです。
結局、キャリアプランを決めたところで、特に今は時代の移り変わりも激しいですし、タイミングや出会う人によっても変わってきます。プランをガチガチに決めるよりは、そのときそのときで対応しやすいように自由でいたいですね。

 

―「キャリアプラン」については昨今、様々なところで言われていて、必死に考えている若い人も多いです。

これも向き不向きなんじゃないかなと思います。
キャリアプランを決めることでやる気が出る人もいるでしょうから。私は先のことをキッチリと決めるのがストレスになるタイプで、「計画」と名の付くものはすべて苦手。だからやりません。

「キャリアプランを決めよう!」というのが流行ると、「キャリアプランを考えていない自分が悪いのかな」という気持ちになってしまうかもしれませんが、そんなことは絶対にないです。

また、こういうので一番よくないのが、キャリアプランを決めるだけ決めて満足しちゃうパターンですよね。
たとえるなら、プレゼンで中身よりも「パワポの体裁をきちんとする」ことに力を注いでしまう、みたいな……。

極端に言えば、キャリアプランだけ決めて目の前のことが疎かになるのと、キャリアプランを考えずに目の前の仕事をしっかりやるのとなら、後者のほうが良いですよね。

もし、私みたいにキャリアプランをうまく活かせる自信がないのであれば、その時間を目の前の仕事で何を求められているか考えることに使った方がきっと有効です。

 

―確かにそうかもしれません。最後になりますが、朝井さんがフリーライターとして働かれるうえで、大切にしていることを教えてください。

駆け出しの頃から1つだけ決めているルールがあります。
それは、「目の前の依頼を120%で返すこと」です。

「自分が今できる120%」なので、どうしても力不足を感じることはありますが、半端なものを納品したくない、というのはずっと変わらず思っています。
基本的なことではありますが、やっぱりこれに勝るものはないはずです。

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