topTOP インタビュー 「不安なままでいい。いつも感じる焦燥感」 人気YouTuberの軌跡 無駄づくりクリエイター・藤原麻里菜さん

「不安なままでいい。いつも感じる焦燥感」
 人気YouTuberの軌跡 無駄づくりクリエイター・藤原麻里菜さん

インタビュー 2020.04.30

 

ふじわら・まりな

1993年生まれ。コンテンツクリエイター、文筆家。頭の中に浮かんだ不必要な物を何とか作り上げる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeを中心にコンテンツを広げている。2013年からYouTubeチャンネル「無駄づくり」を開始。現在に至るまで200個以上の不必要なものを作る。2016年、Google社主催の「YouTubeNextUp」に入賞。2018年、国外での初個展「無用發明展- 無中生有的沒有用部屋in台北」を開催。25000人以上の来場者を記録した。

YouTube:https://www.youtube.com/user/mudadukuri
Twitter:@togenkyoo
ブログ:https://marinafujiwara.persona.co/

めんおう|ライター

大学卒業後、防衛省、民間企業を経てフリーランスの主夫×ライターへ転向。取材、インターネット、働き方などを中心に執筆。

「不安、焦りはあって当然。このご時世、不安じゃない人がいたら怖くないですか?」
こう語るのは26歳の「無駄づくり」クリエイター・藤原麻里菜さん。

藤原さんは、「札束で頬を撫でられるマシーン」「会社を休む理由を生成するマシーン」…など数々の「無駄」なものを発明しており、YouTubeはチャンネル登録者7万6000人、Twitterはフォロワー5万1000人を超えるなど支持を集めています。

しかし、それでも「ずっと昔から、毎日焦ってばかりです」と話します。

「いやいや、藤原さんだからできたんでしょ?」
「私には無理。運の要素も大きいよね…」
と思う方も多いのではないでしょうか。(自分もそう思っていました!)

しかし、取材をすると藤原さんも、今でも私たちと同じように悩み・不安を感じていること。そして、活躍の陰には泥臭く、地道な努力があったということがわかりました。

今回は、藤原さんが、実際にどうやって「好きなことで、生きていく」を実現したのかに迫ります。

10代、20代、どこにでもいる少女だった藤原さん

―現在どんなお仕事をしているのか教えて下さい。

YouTubeを中心にしたSNSで「無駄づくり」というコンテンツを発信しています。他にも文筆の仕事も多く、コラムなどを執筆しています。

2013年にYouTubeを始めてから、200以上の無駄なものを作りました。
例えばこんな感じですね。

インスタ映えを台無しにするマシーン

「別れました」とツイートされると光るライト

モテる仕草(髪をかき上げる動作)を永遠にするマシーン

 

―これは…(無駄だ…!)

2018年には、台湾で個展もしたんですよ。

 

―まさに「好きなことで、生きていく」ですね。どうやって「無駄づくり」にいきついたのですか?

10代の頃は、ごく普通の高校生でした。
絵や音楽には興味があって、バンドとかもやってました。
でも、なかなかうまくなれなくて、始めては辞め、辞めてはまた興味のあることを始め、の繰り返しでした。

たまに「才能がある」と言われることがあるのですが、自分ではあまりそうは思いません。
絵も音楽もすぐやめたし、勉強もできませんでしたから。

 

―高校卒業後はどうされたのですか?

実は、お笑い芸人になるために、NSC(吉本総合芸能学院)に行ったんです。
親に「行きたい大学あるの?」と聞かれて、半分冗談で「よしもと行く。」と言ったら親がなぜか喜んで親戚中に言いふらしてしまって。お笑いには、元々興味はあったんですけどね。

 

―この時点で、普通の高校生じゃないような気が…

よしもと、というのは珍しいかもしれませんが、興味のあること、やってみたいことをしてみるというだけのことだと思います。
将来の不安というよりも、高校卒業したくらいだと、目の前の選択肢からどれを採るかというくらいしかなかったので。

 

軌道に乗るまでの「泥臭すぎる努力」

―よしもとに入って、どうしてYouTubeなんですか?

私、よしもとに入ったのはいいんですが、全然売れなかったんですよ。
「どうしたもんかな」って数ヶ月経ったくらいのとき、YouTubeをやってみようと思いたったんです。

それで、企画として出したのが「無駄づくり」でした。
最初に動画を作ったとき、「自分の中のおもしろさが出せるかも」という手応えはありました。

 

―すぐにYouTubeを収益化して、「無駄づくり」が仕事になったという感じですか?

いえ、全然です。
「仕事になりそうだ」と確信がもてるまで、3年かかりました。

初めて制作した作品「お醤油を取る無駄装置」

 

―3年とは長い…普通、折れちゃいますよね。。

まず、YouTubeの広告収入では全然食べていけませんでした。
最初はYouTubeと言ったら、ヒカキンさんみたいにビッグになれるかも、みたいなふわふわしたイメージしかなかったので「話が違うぞ」って。

一日中バイトして、帰ってきて「無駄づくり」して…という毎日で、かなりしんどかったですよ。

 

―どうやってそこから「無駄づくり」を仕事にしていったんですか?

これで食べていけるという状況ではなかったので、現実的に考えるようにしました。
「無駄づくり」で稼ぐためには、どういう方法や手段があるんだろうって。

それでブログを始めて、そのブログが徐々に拡散され、ようやくお仕事がいただけるようになったという感じです。ここまでで3年、21歳の頃ですね。

 

「挫折ばかりだったが、本当に好きだったから『技術の壁』を乗り越えられた」

―そもそも、なぜそこまで「無駄づくり」にこだわるのですか?他にも仕事はあったと思うのですが。

「無駄づくり」が、私のアイデンティティだからです。
これがなくなると、自分が誰だかわらなくなっちゃうなと。
性格も、苦手も、得意も全部ひっくるめて、一番しっくりくると言うか、落ち着くと言うかそんな感覚です。

苦しさがなくて、気づいたら時間が経ってるし、別の仕事をしてたとしても、絶対に副業でやってるだろうな、みたいな。

 

―高校時代には、絵も音楽も続かなかったという話がありました。なぜ「無駄づくり」は続いたんですか?

単純なんですが、「好きだから」ということだと思います。
技術の壁ってあるじゃないですか。

 

―「技術の壁」ですか?

はい、例えば音楽なら「このくらいの曲なら作れそう」みたいなのがあっても、実際作ってみると全然ダメというやつです。
誰でもできることはいくらでもありますが、誰でもできるレベルの先に行けるかどうかだと思うんですよね、好きかどうかって。
これまでは、その技術の壁を超えることができずに辞めてしまっていました。

 

―「無駄づくり」ではその先に行けたんですね?

はい、初めて「技術の壁」を越えられたと思います。

めんおうさん、ライターだからわかると思います。
文章って、誰でも書けるじゃないですか。
でも、「誰でも書ける」の先に行くのが、ものすごく難しい。

私もブログを始めた時、全然おもしろく書けなかったんです。
でも、「この壁を越えないとマジでお金稼げないぞ」みたいな切羽詰まった感じもあって。
何度も読み返しては書き直して、一晩寝かせて読み返して…ってやっていました。

 

―YouTubeでも同じような感覚だったんですか?

そうですね。
YouTubeでも「技術の壁」にすぐぶち当たりました。

自分の頭の中にあるものを、なかなか表現できないんですよ。
動画編集しても、全然おもしろいものができなくて。

でも、そのつまんなさを、かみ砕いて形を変えて表現してみたり、何度も動画編集したりしました。
そんな中で、この部分は自分の頭の中を全部出せたな、みたいなのがあったところで、視聴者さんに「これ、おもしろい!」って言ってもらえたんです。

この時、ちょっと壁を越えたというか、見え方が変わりましたね。
「技術の壁」を触って諦めるんじゃなくて、「もう少し時間をかけて、自分が納得できるまで推敲」みたいなことをできるようになったという感じです。

これが本当に好きということなのでしょうし、だからこそ続けられて、「技術の壁」も超えられたのかなと思っています。

 

不安や焦りはあって当然。むしろ、不安じゃない人がいたら怖い

―藤原さん、とてもキラキラして見えるんですが、今、不安とかはありますか?

不安はずっとありますし、今でも、いつも焦ってます。

何者にもなれてないぞ、何者かになる必要はないけど、何かしなきゃみたいな謎の焦燥感です。
これが私の100%か?だとしたら、ヤバいぞ、みたいな。

 

―焦りというのは、何か目標があってそのギャップに焦るのか、向かう先がわからない焦りなのか、それとも他の何かですか?

まさに、向かう先がどこだかわからない焦りですね。
どこに向かっているかわからないからこそ、何かしなきゃって焦るんです。

でも、焦ってはいるけど、100%をぶつけるしかないんですよ、結局。
頭にあるおもしろいアイディアを、全力で形にするという。

高校時代からずっと、100%を出したことなんかなくて、ずっと後回しにしてきました。
実際100%出しても、おもしろいものは全然作れませんでした。

でも、「無駄づくり」を始めてからは、こんなにおもしろくないんだって受け入れて、もう1回100%出してみる、みたいなことを続けられるようになったような気がします。

 

―藤原さんですら不安や焦りがあるんですね!

ありますよ。
将来が不安だ…という人は多いですが、不安なままでいいと思うんですよね。

不安じゃない人って怖くないですか。
こんなご時世で、不安じゃない人いたら怖いですよ。

 

取材後記

藤原麻里菜さんを取材して一番感じたのは、藤原さんがとても身近な存在だということです。

「無駄づくり」というちょっと変わった仕事をされているので、キラキラして見えますが、それでもなお、

  • 何かしなきゃと毎日焦る
  • どこに向かっているか、自分でもわからない

と言います。

また、努力の量も半端ではありません。
YouTubeを始めとした「無駄づくり」が軌道に乗り始めるまで3年かかったそうです。(1年だってなかなか続きませんよね)

「好きなことで、生きていく」というとキラキラして見えますが、そうでもありません。

「好きなこと」を仕事にするとは、自分が納得するまで推敲し続けるという泥臭い努力ができた人だけが手にできる夢なのですから。

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