topTOP インタビュー 本業×複業=理想のキャリア 複業研究家が考える、新時代のキャリアとは?HARES代表/複業研究家 西村創一朗さん(30歳)

本業×複業=理想のキャリア
 複業研究家が考える、新時代のキャリアとは?HARES代表/複業研究家 西村創一朗さん(30歳)

インタビュー 2019.09.01

これまでほとんどの企業で当たり前のように禁止されてきた「副業」。

しかし、時代は大きく変化し、次々と副業を解禁・容認する企業が増え、ブームのように副業が取り上げられるようになった。

ブームに流されず、副業についての考えを深めていくため、副業の第一人者で、TVや経産省の会議でも発言されている西村さんにお話を伺った。

これまでのキャリアや副業への考え方、よくある勘違い、どうやって副業を始めたらいいのか?などを教えていただいた。

「副業」ではなく「複業」  目的を明確に

経歴
複業研究家/HRマーケター。19歳でパパに。
大学卒業後、新卒でリクルートキャリアに入社し、法人営業や新規事業開発に取り組んだ。本業の傍ら副業でブログを始め、2015年に株式会社「HARES」を設立し、2017年に独立。「二兎を追って二兎を得られる世の中を創る「HARES」のCEOを務める。
副業や働き方改革の専門家として活動中。
子育てをする父親支援などを行うNPO法人「ファザーリングジャパン」理事も務めている。

「HARES」(ヘアーズ)という会社の代表を務め、複業支援を行っています。

企業や個人に対して、副業に関するセミナーを開いたり、コンサルを行ったりしています。また、オンラインの学校「HARES UNIVERSITY」を開講し、「副業に興味あるけれども、何をすればいいのか分からない」といった方向けに、一歩を踏み出すための支援などを行っています。

僕の肩書を注目してほしいのですが、副業」研究家ではなく、「複業」研究家です

副業というとあくまでサブ的な位置づけで、「副収入を得るための小遣い稼ぎ」という意味合いが強くなってしまっています。お金を稼ぐために副業するのも悪いとは言いませんが、お金が目的になってしまうとどうしても時間の切り売りになってしまいがちです。アルバイトで働いていますとかアンケートモニターで小銭稼いでいますなどの方が、お話を聞いていると多いですね。

でも、僕は副業とはそうではないと考えていて、自己成長と価値貢献をした結果としてお金がついてくると思っています。お金は目的ではなく結果です。

単に副収入を得るための副業とは違う概念として、あえてこのパラレルという「複業」という字を使っています。「副業せずに複業せよ」と言うことも多いです。

SNSや広告などで、「誰でも・楽に稼げます」のような謳い文句が散見されるようになってきましたが、全く違います。僕はそういうのを総称して、副業詐欺と呼んでいますが、「15分やるだけで月30万稼げます。その情報を10万円で売ります」といった情報商材が多くなってきましたよね。それで被害に遭って、弁護士の元に駆け込んでおるようなケースも実際増えてきています。完全に副業詐欺ですね。

人間は弱い生き物なので、「ラクして痩せたい」のと同じく、「ラクして稼ぎたい」んですよ。でも、ラクして稼げるぐらいだったら、そもそも本業で既に稼げているはずです。1日数分とか短い時間で簡単に稼げると思ったら大間違いです。

大切なのは、「なぜ副業したいのか」ということです。副業に取り組む目的を見失い、手段が目的化しているケースが多く見受けられます。「なんか今副業が1つのブームだし、俺も副業もやらなきゃ」という考え方です。

始めはそれでもいいですが、そのまま副業を始めてしまうと手段が目的化してしまうので、「あれ?なんで私副業やっているのだっけ?」と迷ってしまいます。貴重なプライベートな時間を使って取り組むことになるのに、何のためにやっているか分からなくなってしまうと、単にプライベートが疲弊してしまいます。

「自分がその会社ではできないやりたいことが既にもう明確にあって、それに取り組むことでモチベーションあげたい」
「このまま本業をやっているだけでは、自分のスキルや経験もあんまり成長が見込めない。自分のスキルや経験を活かして、会社以外の場でチャレンジしてみて自分の力試しをしたい」

副業をする目的は人それぞれだと思いますが、上記のように目的を言語化して、自分でしっかりと把握することが重要です。

 

「本業で得られないスキル・キャリアをつける経験を副業で得て、自分のスキルをさらにユニークなものにしていくのか」というのが、一番重要なポイントかなと思います。

目的が見えれば、自ずと何をすべきか見えてきます。「まだ自分も気づいてない強みを活かして会社に依存しないキャリアを作りたい」ということであれば、まずは「自分の強みって何だろう?」というところから、自分の強みを洗い出してみようということにつながってきますよね。

 

複業で掴んだ理想のキャリアと働き方

僕自身は、複業したことによって、理想のキャリアを切り開くことができました。

新規事業開発の仕事をしたいと、新卒でリクルートに入社しましたが、配属は法人営業。本業を頑張る中で得られるキャリアというのは、「縦のキャリア」になってしまいます。

どういうことかといえば、法人営業として入社すると、その後は、法人営業のリーダー、営業マネージャー、営業部長‥‥と営業の縦のキャリアになってしまいます。

営業というキャリアの先に、僕がやりたかった新規事業開発といった仕事は得たくても得られません。3年目くらいにこのことに気づきましたが、当時子どもがいたので転職して新規事業開発の仕事に未経験でチャレンジするのはリスクが高すぎました。なので、転職でも独立でもない第三の選択肢として複業で事業開発につながることを、まずミクロに始めて、事業開発につながるような経験を積んでいこうと決めました。

そこで、ブログメディアを立ち上げた、というのが僕の複業の始まりです。それが結果的に、月に1020万人が読んでいただけるようなメディアに成長して、社内の新規事業担当に僕の存在が認知してもらえるようになりました。ご飯に行くようになる中で気に入ってもらい、「営業に西村という面白い奴がいるから、こちらの部署に連れてこよう」という話になり、新規事業開発の部門に異動することができました。つまり、複業によって自分自身の理想のキャリアを実現したという原体験があり、このような体験をより多くの方に届けたい、と複業を軸に活動を始めました。

また、複業で、自分の理想の働き方も複業によって実現しました

3人目の子どもが生まれたことがきっかけで、子どもと過ごす時間について考えるようになりました。

自宅から職場までが片道1時間半もあり、年720時間も通勤に取られてしまっていたので、その時間を娘と過ごすために、働く時間と場所を自分で自由にデザインできる働き方にしようと、2017年に独立しました。

いきなり会社を辞められたわけでなく、2013年に複業を始めて、3年ほどで本業と複業の収入が同じくらいになりました。「本業を辞めて、その時間を複業に投下したら、生きていくのに困らないぐらい稼げるだろう」という見立てができたことが大きかったですね。複業していたからこそできた独立でした。

複業を始める2つの条件

僕が複業にブログを選んだ理由は、自分の強みが活かせること、②制約条件の中でもできる、という2つの条件を満たしていたからです。

自分の強み」を「ストレングスファインダー」というツールで毎年調べているのですが、1位にはいつも「収集心」が、最上位に来ていました。「収集心」が1位の人は、日本人では珍しく、編集者は持っている人が多いと言われています。

収集心というのは、情報の収集なので、人・モノ・情報を集めて、誰かの役に立つような形で加工して届けることが得意ということです。メディアの編集者になって、自分の身の回りの人に役に立つ情報を届けるということをやってみたらいいのではないかと思い、ブログメディアを始めました。

もう1つの「制約下でも挑戦ができる」ですが、僕の場合は通勤時間でできることでした。仕事は本業で忙しく、帰宅すれば子どももいて家事・育児があります。そうなると、僕が100%コントロールできる自由時間は、さっきの往復の通勤時間しかありません。

自分の強みが活き、かつ通勤時間でできるのは、スマホでブログやることだろうと思い、スマホで毎日ブログ書いていました。

 

本業と副業の掛け算が、必要な時代に

とはいえ、副業をやるかどうかは人それぞれで、個人の自由です。全ての人が副業をやるべきだとは全く思っていません。

ただ、「自分を経営する」と考えた際、あるいはこれからのキャリアの作り方を考えた時、勤務先の会社に自分のキャリアを依存するっていうのは、すごく不安定ですよね。いつ何時興味が無い職種に、「異動」と言われるかもわかりません。

そうなった時「嫌だ」と言えるようにするためには、会社の看板を外して、自分自身で売れるスキル、稼げるスキルを身につけておくことはかなり重要で、それを検証する手段として副業は有効だと思っています。

ただ、本業と副業は重なる部分があります。

副業で稼げる人は、本業で成果出している方が多いです。また、副業始めようと意識した時に、自分にはまだ売れるスキルがないということに気づき、そこから本業に本腰入れて頑張ったことで、副業につながったという方もたくさんいます。

本業で成果や結果を残すことが、結果として副業にもつながるということです。これからの20代には、本業と副業をうまく掛け算しながら、自分のキャリアを作っていくことが求められるでしょう。僕自身は、本業と副業がきれいに掛け合わさりました。

 

少し話は変わりますが、僕は働くうえで2つの軸がありました。1つはいつか自分が本気で挑戦したいことに出会った時に、それに挑戦できる自分をつくりたいというものです。

具体的に言うと、独立したいと思った時に、独立できるだけの力を身につけたいということです。

もう1つは、リクルートというリソースがある会社の中で、新規事業にチャレンジしたいという軸です。

この2つの想いがあった中で、僕自身が本業と副業の掛け算によってどちらも達成することができました。ちゃんと本業に向き合い、しっかり成果を出すことと、本業以外の場で小さいミクロな事業にチャレンジをして伸ばすという成功体験の掛け算によって達成できた、というわけです。

実際、新規事業の担当役員から社内ヘッドハントしていただいた際、その要件がインターネット業界に興味関心があるというのと、ちゃんと職場で成果をあげている、という2つでした。なので、営業としてあまり成果を上げていなければ、声はかかっていなかったでしょう。

 

副業が広まらない要因は、「職場の壁」と「意識の壁」

副業に興味・関心がある人は89割くらいいるにも関わらず、やったことがある人は3割しかいないという大きなギャップが社会の中に存在しています。この要因として大きく2つの原因が考えられます。

1つは職場の壁で、もう1つが「意識の壁です。

職場の壁」というのは、男性の育児休暇とほぼ同じ問題だと思っています。男性であっても、子どもが生まれたら育児休暇を取得する権利があるのに、実際に取っている人は、数パーセントしかいません。

副業に関しても、2018年時点では、副業を容認している会社は3割にとどまっています。今年になって5割ぐらいまで広がってきましたが、まだまだ副業に対する職場の理解というものがまだ進んでいません。

副業を解禁している大手企業ですら、副業申請はほぼ上がってこないようです。会社として、副業容認・解禁と言ったとしても、実際に部下が副業をしたとしたら面白く思わない上司が多い、というのはやはり現実的な側面として大きいと思います。これが職場の理解、職場の壁っていう問題ですね。

もう1つが「意識の壁」という問題で、副業に取り組むということに対して、個人が重く捉えすぎていることです。皆さん自分に何か特別なスキルがないとできないと思い込んでしまっています。他の人に売れるスキルやノウハウがない人は、ほぼおらず、何かしらあるのに、そこに気づけていません。つまり、自分の強みをしっかり認識できておらず、それを売る術も理解できていません。

例えば、「飲み会で年300回幹事をやっています」といったクレイジーな人がいますが、それだけ数をこなしていると、もう飲み会ノウハウをハックしています笑。ツールや店の選定、幹事の仕方といった何から何まで、全部ハックしているのでそのノウハウは売れます。

これは実際に、副業にしている人の例ですが。他にも、今は人材業界の営業をやっていますが、前職は大手スーパーの鮮魚売り場で魚さばいていたという方がいました。魚のさばき方を友達に教えているということなので、「ニーズあるのでは?」と思い、「魚の捌き方を教えます」という講座を開講したところ、売れっ子になったそうです。

あと占いとかですね。

「生年月日を教えてもらえれば、向こう10年の運勢についてお伝えできます」と友達にやってあげていた人がいて、「それ電話占いとかやったらかなり売れるのでは」と考えて、スキルシェアサイトで公開したところ、それが大ブレイクしてその人も本業と同じぐらいその副業で稼いでいます。

例をあげればキリがないですが、何かしら探せばあるものです。

 

「息子世代に、良い日本を残すための仕事をしたい」

自分の20代を振り返ってみると、せわしない20代でしたね。

20歳になった大学2年の時には、もう0歳の長男がいました。大学2年の終わりにはファザーリング・ジャパンにジョインして、学業の傍らNPO 活動を始めました。

そして、今のリクルートキャリアに新卒で入社し、1年目で次男が生まれました。営業頑張りながら、3年目で副業始め、それを法人化し、そうこうしているうちに娘が生まれ、その間に家を買い‥‥と、20代でライフイベントを経験し、せわしなかったですね。笑

何のために働くかが、僕の場合はかなり明確だったのは、子供のおかげかなって思っています。それこそ就職活動していた時から、今に至るまで、僕の仕事観って全く変わっていません。

それは、「自分の息子たちの世代にいい日本を残すための仕事をしたい」ということです。「自分のこの仕事があったから、君たちのこの世界はよりよくなっている」というベターな世の中をつくる仕事がしたいです。当時リクルートキャリアを新卒で選んだのも、採用とか雇用とか働くという領域が日本を良くする先端点だと思っています。

特に副業という分野に絞っているのも、世界ワーストクラスの従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)を、2030年までにトップ10に引き上げたいと思っています。2030年というのは長男が社会に出るタイミングです。

だからその時までには、「働くことを嫌だとかネガティブに思う世の中」ではなく、働くのが楽しいと思えるような世の中にしたいですね。

こうした考え方は子どもがいたからこそできたものなので、子どもが形作ってくれた僕の働く価値観です。

 

日本人の労働観をポジティブに変える

エンゲージメント(仕事への熱意度)を考える上で、外すことができないのが親の影響です。キャリア教育なども大事だと思いますが、どんなに良き教育を経ても、究極のところ、自分の親がポジティブに働いているかどうかで、子どもの就業観にかなり影響を与えると感じています。

僕が新卒採用を担当していた時、「この子はいいな」と思える人に「お父さんお母さんってどんな仕事していたの?」と聞くと、凄く誇らしそうに親の仕事について語るんですよ。逆に、働くことについてネガティブに思っている人って、だいたい親がネガティブな働き方をしていました。

そうした経験から、「キャリア観を形成するのは、結局親の働き方ではないか」という仮説を持っています。僕の父親は帰ってくるなり愚痴しか言っていませんでした。笑

だから大学入るくらいまで、働くことをあまりポジティブに思っていませんでした。しかし、自分が親になり、働くことを真剣に考えなきゃいけないという段階になって、ポジティブに働いている人たちに影響を受けました。

その窓口になったのが、ファザーリング・ジャパンというNPO で、このNPOに所属している人達は、みんな仕事も子育ても両方二兎を追って二兎を得ている人たちでした。そういう人たちに5人、10人、100人と会っていく中で、「働く=つまらない」ではなくて、「働く=自分次第でいくらでも面白くできる」ということに気づけたので、結果的にポジティブなスタンスで就職できました。

それは自分の親はネガティブなワークサンプルだったけれども、出会った人達はポジティブなワークサンプルで、ネガティブとポジティブで天秤をかけた際にポジティブが勝ったから、そういうスタンスで就職できました。

だから、1番影響を与えやすい親というワークサンプルをポジティブに変えていくと同時に、これから社会に出て行く学生が、自分の親以外のポジティブなワークサンプルを知る機会を増やすということも、同時にすごく大事だと思っています。

 

傷つかないために、小さい変化で安定を生み出す

「今の20代はこうだ」と決めつけるのはあまり好きではないですが、僕のところに寄せられている相談などを総称して思うことは1個あります。

 

最近、ハヤカワ五味さんという方が、「傷つきたくない文化圏」というタイトルでnoteに書いていて、まさにそうだなと思っています。今は常に無数の選択肢に溢れているじゃないですか?

今の生活の延長線上にある選択肢Aと、今の生活の延長線上にはない、つまり新しいチャレンジをして何かが得られる選択肢 B とあった時、仮にB の方が得られるものが大きいかもしれないとしても、そこに失敗という可能性、つまり失敗によって傷つく可能性が少しでも含まれているならば、「現状維持でいいや」という選択をしてしまう人がすごく多いと僕は感じています。

でも、結局それって失敗する、あるいは傷つくっていうタイミングを先送りにしているに過ぎないと思っています。

現状維持とは長期的に見れば、下り坂のエスカレーターです。変化をしないことが、一番の不安定です。今のまま変化しないで居続けるというよりも、自分は変化に弱く傷つきたくないからこそ、チャレンジする。今の自分を守りながらチャレンジする方法として副業はかなり良い選択肢です。

転職するとか今の会社を辞めて独立するのは、変化率の大きいチャレンジなので、当然怖いですよね。今の本業の中で何か変化を生み出してみるとか、それが難しいようであれば会社の外で副業にチャレンジをしてみるとか、小さな変化で自分の安定を作り続ける、ということをぜひ意識してもらえるといいのかもしれないですね。

逆説的になりますが、変化することが安定への近道です。

僕も安定志向ですよ。安定志向じゃなかったら、こんな石橋を叩くようなキャリアの歩み方しないと思います。全部石橋を叩いてから、ある程度これならイケるなっていう目処が立ってから、次の橋によいしょって渡るようにしています。

傷つきたくない文化圏の世代だからこそ、副業でまずは小さくチャレンジしてみて、そこで得たものを本業で小さく試してみる。必要以上に皆さん自分を安く見積もっています。

聞いてみると、「売れるスキルだよ」と思うのに、「こんなんで副業できますか」といった安く考えてしまっている。背中を押してあげたり、承認してあげたりすると、「それでいいんだ」という風に肩の荷が下りて、皆さん第一歩を踏み出されていきます。この背景として、「失敗したらどうしよう」という傷つきたくない側面があるからだと思います。

誰にも気付かれないレベルでいいんですよ。誰にも気づかれなければ傷つくこともありません。それぐらい小さなレベルで試してみて、「これなんかすごく人に喜ばれるぞ」「これいけるぞ」という感触がつかめてから広げてくという形でいいんじゃないでしょうか?

傷つかずにチャレンジする方法はあります、それが副業なんです。

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