ユーザベースをIR分析!大幅赤字の投資は来期への布石!?
企業口コミサイト「OpenWork」の総合評価ランキングで4位になっているユーザベース(UZABASE)。
主な事業としてはニュースメディアの展開であり、「経済情報で、世界を変える」ことをミッションとして掲げている企業です。
インターネット業界においてはあのGoogleに次ぐ2位であり、セールスフォースを抑えるほどです。
この記事では、ユーザベースのIR情報から、考え方・事業内容・今後の主力事業を分析し、なぜ成功できているのかも併せて考察します。
目次
ユーザベースの概要
画像出典:ユーザベース ホームページ
近年名前をよく聞くようになったユーザベース。いったい何をしている会社でどんな強みがあるのかを解説していきます。
考え方
ユーザベースのホームページに、ミッションとして考え方がまとめられています。
私たちは、世界中で愛される経済情報インフラをつくります。
あらゆる経済情報を人とテクノロジーの力で整理・分析・創出し、ビジネスパーソンの生産性を高め、創造性を解放します。
私たちは経済情報を通じて世界中の意思決定を支え、世界を変えます。
つまり、「経済情報を人とテクノロジーの力で整理分析し、ビジネスパーソンの生産性を高める」ことをしている会社です。
それを実現させる手段として、大きく分けて2つのサービスを展開しています。
- 経済情報の検索プラットフォーム
- ソーシャル経済メディア
これらの役割を担う事業について見ていきます。
事業内容
現状扱っている事業を以下にまとめました。
特に注目すべきポイントについては後半で考察しているため、ここでは概要を掲載します。
- SPPEDA
- NewsPicks
- Quartz
1. SPEEDA
画像出典:ユーザベース 2019年12月期第3四半期決算説明資料
SPEEDAは、あらゆるビジネス情報を格納したプラットフォームです。
情報がわかりやすく整理・分類されており、専属アナリストの業界レポートも豊富に収録されています。
また、 業界分析や企業調査を圧倒的に効率化し、企業の進化を加速します。
各業界の環境を5分で把握できたり、ターゲット顧客を絞り込んだり、素早い理解は付加価値を生み出す時間を作ることにもつながります。
2. NewsPicks
画像出典:ユーザベース 2019年12月期第3四半期決算説明資料
NewsPicksは、国内外の主要ニュースが手に入るニュースメディアです。
各界のプロによるニュース解説や、編集部によるオリジナル特集があります。
また、NewsPicks for Businessは「企業文化を強くする社内メディア」として役立ちます。
有料会員になると限定記事や限定動画を見ることができるほか、イベントの招待を受けることができます。
3. Quartz
画像出典:ユーザベース 2019年12月期第3四半期決算説明資料
今期は2018年に買収してから一番大きく動いた年といえるであろうQuartz事業は、ユーザベースがNewsPicksと並行して最も力を入れている事業です。
内容としては、「次世代のビジネスパーソン」に必須のグローバルニュースを毎日の朝夕に届く「ニュースレター」で受け取れるサービスです。
また、2019年11月13日にQuartz Japanが発足しており、Quartzとしては日本において大きな動きが見られた年になりました。
その他事業
上記以外にもFORCASやINITIALといったサービスを展開しています。詳しくはユーザベースのホームページでご確認ください。
IR情報の分析
続いて、ユーザベースのIR情報を分析した結果分かったことをまとめます。
転職を考えている人や投資の際に参考にしていただければ幸いです。
2019年の第3四半期決算説明会の資料を元に考察します。
130億の負債!?
表は、直近3年分の第3四半期のB/S(Balance sheetの略称。貸借対照表)を比較したものです。
一番上の項目(17.Q3など)は西暦下2桁と、クォーターを示しています。
2018年から大きく変わっており、負債の中でも特に固定負債が大きく増え、固定資産も増えています。19年はその姿勢を継続しているといえるでしょう。
ユーザベースにとっての固定資産とは19.Q3における99億8800万円のうち、実に85億500万円が「のれん」です。つまりM&Aを行っているということです。
まとめると、買収のためにたくさん資金調達をしたということになります。長期借入金などの固定負債により額面の大きな資金調達を可能にし、QuartzやNewsPicks USA社の子会社化を果たしたことがわかります。
自己資本比率は3年間で41.90%から19.00%と大きく落ち込んでいますが、負債による資金調達を行ったことが要因のため当然の結果です。
このタイミングでの資金調達は必要不可欠と判断し、一見すると「大丈夫?」と言いたくなるような財務諸表になることも厭わずこういった決断ができるあたりが、ユーザベースの魅力の一つだと言えます。
今年の決算は赤字
続いて、同じく直近3年分の第3四半期のP/L(Profit and Loss statementの略称。損益計算書。)の比較です。
売上、売上総利益ともに順調に推移しています。
しかし、営業利益が-14億3600万円であり販管費の増大に対して賄えておらず、現状赤字の決算です。買収の影響が如実に出ています。
これについて第3四半期決算説明会では、「Quartzに投資しているためであり、赤字も計画通り」であることを表明しています。
実際、投資をしなければ大きくプラスであることはEBITDA(税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益。)を見ていただければわかると思います。
赤字を計画に入れている投資は来期以降に大きな効果を発揮すると言えます。
ユーザベースが注力していくモノ
多額の資金を調達し、投資しているQuartzとはいったい何なのか。
今後主軸となっていく事業、このタイミングで大きな投資をする意味を考察していきます。
Quartzへの投資
画像出典:ユーザベース 2019年12月期第3四半期決算説明資料
Quartzは2012年に設立された新しい経済メディアです。
ユーザベースが買収したのは2018年7月であり、1年が経過したばかりの事業です。
そんな事業に赤字になってまでつぎ込むほどの魅力はいったい何なのでしょうか。
Quartzとは
Quartzのサービス内容は、Eメールによって、Quartzによる「次世代ビジネスパーソン」のためのニュースレターが毎日届くというものです。
一見、メールという媒体は時代錯誤だと思われるかもしれませんが、ニュースとメールのハマり具合は近年大きく見直されており、Quartzはそのブームの火付け役です。
今ではメールマガジンのみで運営するニュースメディアがあるほどです。
Quartzはニュースメディアとして世界に名を轟かせるトップ企業と言っても過言ではありません。
なぜ買収が行われたのか
Quartz Japanのサイトにはユーザベースによる買収にあたり、以下のようにコメントを残しています。
今回の合意の一部として、Quartzは既存のビジネスに加え、米国版NewsPicksのコンテンツに関する責務を引き継ぐことになります。
この合意で最も重要な点は、ユーザベースの達成したい目標が、私たちと全く同じだと言うことです。
それは「世界で最も影響力のある経済メディアをつくる」というミッションです。私たちは、この目標を共に達成したいと思っています。
またユーザベース側としては、「モバイルに適したクオリティの高いコンテンツを提供するQuartz社は、当社が北米のみならずグローバル展開を目指す上で最適のパートナーと考えた」と買収決定の理由について説明しています。
これらから言えることは、NewsPicksとQuartzはビジョンと価値観が共通であるということです。
M&Aの美しい成功例として取り上げる人が散見されるほど、理想的な形の買収です。
また、多額の投資をする理由としては、
- Quartzが持つ80万人を超えるメール会員からの有料会員への転換を狙うため
- 今後間違いなく伸びるであろうグローバルなメディアであり、かつ若い世代向けのコンテンツは他にないから
という2点であると考えられます。
直近では「Quartz Japan」を2019年11月13日にリリースし、“真のグローバル” を日本に提供し始めています。
NewsPicks for Businessの立ち上げ
画像出典:ユーザベース 2019年12月期第3四半期決算説明資料
第3四半期の大きな動きとして、アルファドライブの買収発表がありました。
これはNewsPicks for Buisinessの法人展開・強化を進めるための買収でした。
アルファドライブのソリューション力と、ユーザベーグループがすでに持っているSaaSプロダクト力を組み合わせることで、法人向け事業を来期以降加速していきたいと考えております。
来期は法人向け事業をより強化していくのがユーザベースグループのテーマのひとつになっていますので、その一環の買収とご認識いただければと思います。
その中でも、まずはNewsPicks for Businessの立ち上げに来期は集中していきます。
ユーザベースのSaaSプロダクトを企業にとって必要なタイミングで的確に提供することを狙いとしているようです。
ワンストップでつなげていくことに重きを置いた方針はユーザベースとして統一された目標であり、一貫性のある行動だと言えます。
来期以降の動向に注目
投資した影響が出るのは来期以降になりますが、Quartzの買収は海外進出という点で大きな動きがあることは間違いない投資です。
NewsPicksとともに、来期以降の動向について考察します。
Quartzとのシナジー
NewsPicksとQuartzのシナジーは計り知れないものです。
少なくとも日本において最もグローバルなメディアとなったことは疑う余地もありません。
Quartzのもつ「日本にはまだない本物のグローバルなニュースを提供するメディア」と、NewsPicksというメディアを成功させたメディア運営力を合わせれば、国内のニュースメディア市場を独占するといっても過言ではないと考えます。
NewsPicks for Businessの立ち上げ
画像出典:ユーザベース 2019年12月期第3四半期決算説明資料
アルファドライブの買収をした今期は、人材採用を前倒しで行ってもいます。
グラフからわかるように例年の倍ほどの人材を採用しています。その分来期は積極的な採用は考えていないとのことです。
買収と同時に前倒しの採用をした分の跳躍が来期に期待されます。
また、転職を考える場合、事業とスキルのマッチ度合いがかなり求められる狭き門であると言えるでしょう。
挑戦と安定を併せ持つ企業
今後の方針として、変動幅が大きく不安定な広告を売り上げの主軸とするのではなく、ストック型ビジネスである有料会員を増やすことに注力していく流れとなっています。
今回の投資はそれを推し進めるためのものであると言えます。
新規事業や海外進出に貪欲に取り組みつつ、ビジネスモデルとしてはストック型を取るという、当たればどこまでも拡大していくスタイルを取り、すべて当ててきているユーザベース。
今後注目すべき企業であることは言うまでもありません。